01 西欧思想を伝える周囲
02 科学本の生命
03 岩波文庫の宇宙(1)
04 時代と歴史のポピュラー小説
05 ペーパーバックライター
06

“史”のつく本

07 評伝する作家
08 千夜千冊(1)
09 千夜千冊(2)
10 忘れないための歴史
11 日本を旅する人
 
ようこそ、絶品堂書店へ。
絶品堂の棚をにぎわすのは、松岡正剛が注文したものの、「絶版本」、「品切本」としてすでに手に入らないことが分かった本の数々。
そんな"絶品な"本の中から、最近入荷した本を少しずつ紹介します。
【第11回】
日本を旅する人
書 名 シリーズ 著 者 訳者 出版者 刊行年 事由
日本語小文典(上・下)
岩波文庫
J.ロドリゲス
池上 岑夫
岩波書店
1993
日本幽囚記(1−3)
岩波文庫 ゴロウニン 井上 満 岩波書店 1960
大君の都 ―幕末日本滞在記(1−3)
オールコック 山口 光朔 岩波書店 1962
日本遠征記 (1−4)
岩波文庫 ペルリ 土屋 喬雄
玉城 肇
岩波書店 1953
日本滞在記(上・中・下)
岩波文庫 ハリス 坂田 精一 岩波書店 1954
ヤング・ジャパン 〜横浜と江戸〜
東洋文庫 J・R・ブラック ねず・まさし
小池 晴子
平凡社
1970
ベルツの日記(上・下)
岩波文庫 トク・ベルツ(編)
菅沼竜太郎 岩波書店
1992
横浜山手−日本にあった外国
鳥居 民

草思社
1977
回想の明治維新
岩波文庫
メーチニコフ
渡辺 雅司
岩波書店 1987
ビゴー日本素描集
岩波文庫 清水 勲(編)

岩波書店
1986
日本の家屋と生活
ブルーノ・タウト
篠田 英雄
岩波書店
1995
私の幼少年時代 他 〜郭沫若自伝〜
東洋文庫 郭沫若
小野 忍
丸山 昇
平凡社
1967


 「副詞・複合語、敬語と丁寧語が多い日本では、西洋人のように身振り手振りの必要がなくなっている」。16・17世紀、ザビエルを嚆矢に渡来した宣教師たちの一人ロドリゲスは、日本語の語法についてこんな驚くべき分析を行った。中世から近代の日本を旅先とした異人たちは、辞書や紀行、絵などさまざまな表現を使って"驚嘆の国"を本にした。

 1811年(文化8)、函館にとらえられたロシア船長ゴロウニンの手記は、鎖国下の日本を克明に描いてヨーロッパ各地でベストセラーになる。ペリーは日本に向かう前に、この『日本幽囚記』やシーボルトの『日本』など40冊もの日本に関する書籍を読んで、交渉を準備した。

 のちに三井コンツェルンを世界最大の財閥にした“三井物産の大番頭”益田鈍翁が、わずか13歳で通訳を務めたのが初の駐日アメリカ公使、タウンゼント・ハリス。その滞在記は岩波文庫で上巻だけで500ページを超える。強硬な姿勢を保ったイギリス初の公使オールコックは、わずか3年の滞在期間をこれも3巻の長大な滞在記に綴った。のちに闇雲なほど急激に西洋化を果たす日本だが、まず最初は"日本風"が本のかたちで西洋世界に出ていったのだ。

 昭和初期に日本に亡命し、その後中国で抗日運動をささえた詩人で革命家の郭沫若のみずみずしい自伝、まったく同じ時期、高崎の6畳と4畳半だけの洗心亭で暮らし、日本建築の自然との調和とその文化を初めて世界に送り出したドイツ人建築家ブルーノ・タウト。海を越えて来た人が、かかわりの中で多様な日本を本でつくりあげる。そして本は伝える内容だけではなく、本を通した人の名前も記憶にとどまっていくのだ。絵画、音楽のように人に近くて、しかもアートとしてではなくても歴史の中を生き続けるメディアを、私たちはほかにいくつ持っているだろうか。(N)




 

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