|
大塚英志が初めて本格的な総論に挑んだとされる『少女民俗学』、明治期に生まれた「少女」観が、いま社会全体に蠢動しているという解読は、すでに十分魅惑的だ。1980年代からの「週刊文春」の連載を、1年ごと単行本にまとめた泉麻人の『ナウのしくみ』は、たちまち記憶から薄れる小さな事件こそが、"いま"を謳歌していたことも伝えて可笑しい。10冊にわたってまとめられたが、現在すべて入手不可能になっているのはかえって潔い。
そのほか、批評に徹しながらもイメージ豊かな文体で、ロックがもつ力と影響を探るシェイファー・ウィリアムの『ロックの意味』なども印象深い。重厚な装いをもたなくとも、時代に懸けたペーパーバックライターの矜持は、光跡を意外に強く読者の網膜に焼き付けているのだ。そういえば、山東京伝らを生んだ江戸時代の「黄表紙」も、子供向けの草双紙から出来た、大人のペーパーバックでしたね。(N)
|