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【解説】鉄:iron
金属元素の一つ。元素記号はラテン語の鉄を意味するferumからきたFe。原子番号26、地球の地殻には4番目に大量に存在する元素(約5.6%)。また、地球の内部は主に鉄からなるといわれている。純鉄は白色の金属で、延性、展性に富み、強磁性を持つ。塊では常温では安定するが、微粒鉄は発火性がある。湿った空気中では容易に錆を生じる。実用に用いられる鉄は、炭素を含み、その分量によって鋳鉄から鋼鉄までさまざまに使い分けられる。鉄はまた、生体にとっても必須な微量元素のトップである。 |
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鉄の種族
【高橋】オーストラリアに約45億年前の地球のできたころの石が見つかって、その石の中にはポルフィリン環という有機物質が発見された。それは炭素と水素の五角形の物質で、酸素を必要とする生物の必需品なんだね。地球上には最初“嫌気性生物”がいたんだけど、彼らは自身に有毒な酸素をつくり出していき、だんだん自滅というか、地球の奥深いレイヤーに押し込められていく。そうして植物が炭酸ガスを酸素としていくと、酸素で生きる好気性生物が生まれるんだね。その立役者の植物は葉緑素をもつけれど、そこにあるクロロフィルにポルフィリン環があり、その中央にマグネシウムが入っているんだ。それで緑色をしている。
【鈴木】へえ、緑ってマグネシウムの色なんですか。
【高橋】そうなんだ。つぎにイカ、タコとか、昆虫などの無脊椎動物の酸素を体内に配る血液は、ポルフィリン環のなかに銅が入った構造をしている。つまり血液が青い。そして魚、人間など脊椎動物の赤血球の赤色は、ポルフィリン環に鉄が入っているんだ。
【鈴木】へえー、そんなものを持っているなんて、すごいんだなあ。しかし、なぜ、そう分かれているんでしょう。
【高橋】なんでだろうね。3本の好気性生物の系統樹をなす植物、無脊椎動物、脊椎動物に酸素を処理する媒体の違いがある。われわれ人類に至る脊椎動物は鉄の種族なんだね。赤い血は酸素を抱き込んだ鉄の色だったんだ。だから青い血、緑の血に対してはわれわれは幾分の嫌悪感を持っている。青い血はね、たいがい悪魔的なんだね。
【鈴木】あはは。悪魔。そうだ、映画の敵役のエイリアンも大抵血の色が違いますよ。血の色は相容れないものの象徴なんすかね。しかし、今日は最初から跳んでますねえ。あははは。
An Iron Empire
【高橋】しかもね、実は鉄鉱石っていうのは、大量の生物の死骸なんだね。嫌気性生物に鉄細菌というのがいて、それは初期の地球に大量に酸素をつくった連中なんだ。鉄を酸化する代謝をして生きていたんだが、その膨大な死骸が鉄鉱石なんだね。硫黄細菌、鉄細菌とかは、硫黄、鉄を媒介する代謝機構を複製するだけの、生命と呼ぶにはあまりにもプリミティブな存在だけど、それが硫黄鉱とか鉄鉱の鉱床群になった。
【鈴木】ふうん。鉄は空からも来るし、地中にも生まれるんだ。
【高橋】うん。ただね、銅や金は自然界に露出していることが多い。青銅をつくるにはその銅を集めて、錫と混ぜるんだが、これは非常に高度な技術なんだ。
古代では溶鉱施設は青銅に向かって発達したんだね。ガラスをつくるるつぼなどを使って金属を混ぜると、どういう合金ができるかを試していった。その成果が青銅だったわけ。中国では銅に砒素を混ぜるんだけどね。そうして柔らかい銅を硬くする。青銅は磨いたりして美しくしやすいんだけど、刃がつくれない。つまり、切ることができないんだ。
【鈴木】そういえば映画なんかでもあの頃の兵隊は剣で切って倒す感じがあんまりしないですね。剣で殴り合ってたんですかね。
【高橋】殴ったり突いたりしていたんだろうね。それはいいとして、青銅をつくるには広域貿易が必要だったんだ。錫はアジアでヨーロッパでも地上では局地的にしか存在しない。どうして錫が発見されて、混ぜて青銅がつくられたかは分かっていない。ちなみに青銅のよさは大量生産が簡単なこと。鋳型に流し込めばいいんだからね。鉄は打たないといけない、つまり量産は難しかったんだ。
メソポタミアの古代帝国はアーリア民族の侵入で動乱期に入った。そして青銅をつくるネットワークが崩壊した。それで逆に鉄が浮上していったんだ。酸化鉄や硫化鉄として存在した鉄鉱石を加熱して、これまた古生代の甲殻類の残骸が岩石化した石灰岩を利用して、鉄を分離させる。その溶鉱炉をハッティが発明したんだ。
千夜千冊にあるツェーラムの『狭い谷・黒い山』にいうように、アッシリアが台頭するに当たって、ハッティの鉄を使ったんだね。ハッティのキュルテペ文書が、西アジアにおける安定した鋼鉄技術が確立したことを伝えている。それがエジプトからイランをまたぐアッシリア帝国という強大な帝国を完成させた。その製鉄技術が世界に広まるんだね。
【鈴木】アッシリアって、あの空中庭園をつくったんでしたっけ?
【高橋】そう。占星術を尊び、ニネヴェの空中庭園、巨大図書館をつくった、かの皇帝アッシュール・バニバルだね。鉄をつかうことで巨大な地上の楽園ができたんだ。
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