◎グノーシス
◎桃山時代
◎グーテンベルクの印刷術
◎超越する博徒
◎サイバネティクス
◎鉄の宇宙誌
[第6形相]
鉄の宇宙誌
【解説】鉄:iron
 金属元素の一つ。元素記号はラテン語の鉄を意味するferumからきたFe。原子番号26、地球の地殻には4番目に大量に存在する元素(約5.6%)。また、地球の内部は主に鉄からなるといわれている。純鉄は白色の金属で、延性、展性に富み、強磁性を持つ。塊では常温では安定するが、微粒鉄は発火性がある。湿った空気中では容易に錆を生じる。実用に用いられる鉄は、炭素を含み、その分量によって鋳鉄から鋼鉄までさまざまに使い分けられる。鉄はまた、生体にとっても必須な微量元素のトップである。 
 
   
イラスト:佐藤三奈子
奇妙な劇
■転生する星
■鉄の種族
■An Iron Empire
■高い車の遊牧民
■雷(いかずち)を発する神
■一つ目の聖痕
■鎌と稲作
■鉄鐸の民俗誌
■秘術が生んだ日本刀
■鉄鋼国家論
 










【Today's words world】
楚の国
黒い男
雌雄の剣
眉間尺
鉄の王
アーサー王伝説
小アジアのハッティ
ヒッタイト文化
隕鉄
天の石
星の一生
天のアイアンロード
核重合
超新星爆発
生まれ変わりの星
生命物質をつくる高分子
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インドラ
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ライトサーベル
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『一目小僧』
『三つ目がとおる』
ギリシャ神話のキュクロプス
北欧神話のオーディン
聖痕幻想
生贄

エクスカリバー
玉鋼(たまはがね)
日本刀
『古事記』
天目一箇神
天鍛人麻羅
銅鐸と鉄鐸
守屋氏
「銅鐸国家論」
鐸(さなぎ)
『ゲルマン人の神々』
鉄神オグン
ソウル
金山彦、金山姫
『鉄山秘書』
村下(むらげ)
ひるまき刀
正宗
高炉
ベッセマー法
大航海時代
火縄銃
軍縮
佐久間象山
反射炉
高島高任
釜石鉄山
小坂鉱山
特殊鋼
羽田空港海上架設案
サビの文化
鉄の霊魂
スサビ
 
奇妙な劇
【高橋】今日はまだお題を決めてなかったな。
【鈴木】はあ、そろそろマテリアルにも挑戦すべきだと思うんすよ。ちょっと地味かなと思うんだけど、「鉄」なんてどうでしょ。いけますかね。
【高橋】そりゃ、いけるさ。鉄は宇宙的にも生命的にも文化的にも、われわれそのものでもあるしね。
【鈴木】はあ。そういう話なんですか……。
【高橋】そうなんだよ。じゃあ、こんな話からしよう。僕が小学校6年生の時、クラスで芝居をすることになっていたんだ。担任の先生は少し変わった人で、そのとき奇妙な脚本を持ってきたんだ。舞台は中国で、戦国時代に揚子江の中流域にあった楚という国の話なんだね。例の『鼎(かなえ)の軽重を問う』の楚の国だね。
【鈴木】あの、親分の資質を問うってやつですね。
【高橋】そう。楚の郢(えい)という首都に鍛冶屋一族がいて、楚の王はその名工に打たせた刀を献上させた。ところがそれが王の枕元で夜泣きをする。不審に思っていろいろと調べるうちに、もう一本同じ刀があり、それを偲んで泣いている、ということが分かった。王は2本同じ刀をつくった鍛冶屋一族を族滅させることにするんだね。
【鈴木】ほんとに小学校でそんな台本やったんですか(笑)。
【高橋】オレも何でこんなやっかいな台本をやるのか、おかしいとは思ったんだ(笑)。ま、変わった先生だったからね。
 郢(えい)の都の南西には茅山(ぼうざん)という山があり、そこに鍛冶一族の最後の生き残りの青年が、王が探すもう一本の刀を持って逃れた。そこには黒い男(道士)がいて、あなたの首と刀を渡しなさい、そうすれば一族の仇を討ってあげようと言う。青年は刀を道士に渡し、自分の首を切り落とした。そこで道士は青年の首と刀を王宮に持っていき、そこに出てきた王を首尾よく暗殺する、という話なんだ。その黒い男の役をやらされた(笑)。
【鈴木】高橋さんが小学生で、黒い男ですか。ぴったりですねえ(笑)。
【高橋】実はこの話は日本でも「雌雄の剣」という名前で知られ、浄瑠璃の「眉間尺(みけんじゃく)」にもなっている。でもその時は知らなかったので、中学生になって、あの話はいったい何だったんだろうと調べてみたんだ。そこで浮かんできたのは、「鉄の王」という概念だった。鍛冶屋がかつて王であったが、そういう時代がおわって、鍛冶屋のつくった刀などを使って世俗的な王が現れたのではないか、という考えだね。
 名刀は王の継承権であったんだ。だからこそ、この雌雄の剣という話が成り立つんだね。郢の町にいた鍛冶屋はもともと「鉄の王」だった。そこに楚という新しい世俗を支配する王が出現し、鍛冶屋に王権を譲らせた。けれども、鍛冶屋一族には、王者の意識が残っていたということなんだね。
【鈴木】しかし、何で鉄が王権になるんだろう。不思議ですねえ。
【高橋】うん。アーサー王伝説もそうなんだけど、鉄の王の観念は世界中にある。鉄は青銅器よりも新しいと思われがちなんだけど、青銅器は結構つくるのが難しい。鉄は紀元前3500年くらいにメソポタミアですでに使われている。紀元前2000年くらいには小アジアのハッティという鉄の国ができてね。そこに東からアーリア族が入ってハッティの製鉄の伝統を拡大して、初めて鉄鉱石を溶かす溶鉱炉で鉄を量産して、ヒッタイト文化をつくる。それ以前は、メソポタミアの鉄は6割が隕鉄だった。隕鉄は炭素を適当に含むので、溶かしてもう一度打てばいい鋼鉄になった。青銅よりもつくるのが易しかったんだね。
 メソポタミアでは、そのために鉄は「天の金属」、「天の石」と呼ばれていた。つまり天上の金属イコール鉄の王という伝説に結びついているにちがいない、と僕は思っているんだけどね。


転生する星

【鈴木】ふうん。隕石って鉄なんだ。宇宙には鉄が漂っているんですかね。
【高橋】うん。実はね、これは星の一生の問題なんだ。以前『遊』(第4号)で松岡さんが「鉄学」を書いたとき、「天のアイアンロード」と言ったことがある。宇宙が始まる最初の3分間があって、物質が生成するんだけれど、最初にできた元素は原子核に電子が1つだけ回っている水素なんだ。それが最初は均等に分布していても、光圧によって徐々に濃淡ができる。そうすると水素は引力で引きあって収縮していき、あるとき核重合で光り出す。最初の太陽だね。こうして星は内部に原子番号の順で重い物質をつくっていく。星の質量が小さいと、鉄まではできなくて白色矮星などになるけれど、内部に鉄をつくった星は最後に大爆発する。つまり、超新星爆発を起こす。そして星がつくった物質が空間に飛び散るんだね。そしてわれわれの太陽系は、宇宙が発生して最初にできた太陽が、スーパーノヴァになって爆発して物質が飛び散ったときの物質でできている。だから、近辺に爆発したときにできたブラックホールがあるんだね。それで飛び散ったチリが移動して、それがまた寄り集まって今の太陽ができた。つまりわれわれの太陽は2代目なんだね。そしてまわりの惑星は、最初の太陽が爆発したときの多様な物質からできているんだね。
【鈴木】それ、すごい話ですね。太陽って生まれ変わりの星なのかあ。それと太陽と地球は同じ材料からできているというのもスゴイ。あっ、そういえば木星ってあと何倍か大きかったら、太陽になってたって聞いたことがある。
【高橋】だから、宇宙空間には重金属がもともとあり、鉄はニッケルや炭素を含んで非常に強固な構造をつくって宇宙空間をめぐっている。生命物質をつくる高分子についても、今では寒冷説などがいわれていて、そう熱くないチリとしてすでに宇宙空間に自然に合成されてきたと考えられている。そこに鉄とか銅とかマグネシウムなどの重金属もばらまかれた状態があった。
 で、ここで非常におもしろいのは、鉄がわれわれの生命にもたらした影響なんだよ。
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