セイゴオちゃんねる

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2016年7月29日

Report モデュレックスの本棚編集プロジェクト

 今年3月、セイゴオのもとに照明家の藤本晴美さんから「松岡さんに、SOS!」という声がかかった。純国産の照明機器メーカー「モデュレックス」の曄道悟朗社長から「オフィスの壁を本でうめ尽くしたい」という相談を受けていると言うのだ。モデュレックスは、伊勢丹新宿本店やザ・リッツ・カールトンといったショップやホテルのライティングから医療施設やオフィス空間まで、照明機器と照明設計にまつわるあらゆる技術を提供する照明プロ集団である。

 初回の打ち合わせでセイゴオは曄道さんと意気投合。「いま隈研吾さんとモデュレックスの改装工事を進めていて、壁一面を埋め尽くす幅17m×高さ4mの書棚をつくることにした。これから30年の現役生活の指針になるような本で埋め尽くしたい。社員と共有したい。ぜひ松岡正剛さんに選書していただきたい」という話だった。

 曄道さんからの依頼は3つ。(1)唯一無二の書架にしたい (2)物理的な美しさから精神的な美しさまで入れたい (3)外面的および内面的な「光」を入れたいなどなど。子供のころから本が大好きな曄道さんは、学生時代はヘルマン・ヘッセのナルツィスとゴルトムントに、社会人になってからはシュムペーターの経済的世界観に「内面的な光」を感じたという。

 セイゴオはさっそく選書に取り組んだ。選書メンバーをひきつれ、怒涛の進軍がはじまった。曄道さんのヴィジョンと日本、そして世界を見渡しながら、それぞれのジャンルのアーキタイプ・プロトタイプ・ステレオタイプのバランスをよくよく検討した。日本古典、日本文化、日本史、日本建築、芸能・工芸、民俗学、世界神話、東洋思想、西洋絵画、演劇戯曲、アート・デザイン、写真、博物学、数理学、技術史、西洋哲学、西洋思想、そして照明学などなど。古書も新刊もある。
 
 編集方針ができあがったところで、セイゴオは曄道さんの好みをさらに引き出すために連れだって書店めぐりを決行した。スタッフともども幾度も書店に通い詰め、約一か月かけて約7000冊強を選びきった。

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【5月7日 セイゴオひび】より
照明機器の革命児モデュレックスの新設本棚(隈研悟設計)のため、神田古本屋をまわる。ぼくも入手したくなった本が多くて困った。本は知と快楽と謎のモデュールなのである。

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【5月19日 セイゴオひび】より
オアゾ丸善を隈なくまわってモデュレックス書架のための本を、曄道・松岡で五百数十冊購入。豪快な収穫だ。四年ぶりに壹岐店長に会い、みんなでハヤシライスを食べる。


 隈研吾さんの設計した書棚にも、セイゴオは存分に本のプロとしての知見を注ぎ込んだ。棚板の横ラインのこだわりや棚板の厚みの工夫、そして文庫を入れる部屋の書棚まで。また、書架照明については曄道さんが昼と夜でライティングを変えるほどのこだわりを見せた。

 棚ができあがるといよいよ書棚づくりだ。粗詰め、本詰め、毎日のように本の出し入れと並び替えが続いた。次第に約7000冊強の本のリストは関係者全員が把握することとなった。セイゴオは出来上がりつつある書棚をみて「これまでかかわった書棚のなかで一番出来がいい」と自負していた。

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【6月15日 セイゴオひび】より
恵比寿の一角に誕生しつつあるモデュレックス本棚の詰めをする。とても気持ちのいい照明機器集団で、本棚を詰めていて社内空気が何重ものウェーブを送っているように感じた。

 仕上げはこの書棚の命名だった。セイゴオは数週間考え続けた。曄道さんの思い、隈さんの書棚の形状、これから30年のモデュレックスのこと――。すべてを頭のなかにおきながらようやく閃いた「光冊房(こうさつぼう)」。金を混ぜ込んだ墨で書き上げ額装した書を、曄道さんに贈呈した。7月5日のお披露目パーティでは、数百人の来場者に光冊房の書棚マップが配布され、セイゴオもご機嫌で書棚談議を楽しんだ。

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左から、曄道悟朗氏、松本照久氏(リックデザイン)、面出薫氏(照明デザイナー)、隈研吾氏、セイゴオ

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【7月5日 セイゴオひび】より
モデュレックス本社のオープニングP。隈研吾のネステッドな設計に七千冊の多重書架「光冊房」がらライン照明されてお披露目。演出はペコ。

レポート:和泉佳奈子

投稿者 staff : 2016年7月29日 23:40