セイゴオちゃんねる

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2012年2月11日

Report NARASIA2011 うた・こころ・ものがたり

 2012年1月28日(土)、品川インターシティホールで、セイゴオの企画・モデレーションによる「NARASIA2011 うた・こころ・ものがたり 日本の源流と東アジアの風」が開催されました(主催・奈良県)。2010年末に奈良で開催された「NARASIAグランドフォーラム」の第2弾という位置づけであるとともに、今年が古事記編纂1300年であることにちなみ、記紀万葉の世界観をまったく新しいスタイルで見せるというトーク&パフォーマンスイベントです。

 ゲストは古代日本の歌や物語に深く通じる歌人の岡野弘彦さん、NARASIAグランドフォーラムでも音楽監督をつとめた作・編曲家の井上鑑さん、ダンサーの田中泯さん。3人は今回のイベントが初顔合わせとなりましたが、いずれも松岡とは相思相愛の異能者とあって、たちまち熱いテンションで結ばれたようです。岡野さんとセイゴオが記紀万葉の歌を詠じ、井上さんが曲をつけ、田中さんがそれを踊りにするというチャレンジングなセッションを次から次へと披露しました。
 演出および裏方は、藤本晴美さん率いる百戦錬磨のプロ集団「藤本組」。和歌ひとつごとに照明・映像・グラフィックを切り替える鮮やかな演出によって、ホールからあふれた立ち見客までを包み込むまほろば的異世界を出現させました。

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岡野弘彦さん・セイゴオの言葉と井上鑑さんの音と田中泯さんの踊りによって、記紀万葉の古(いにしえ)のこころが未知なる記憶として蘇りました。

↓裏方スタッフによるとっておきフォトレポートはこちら

1. 本番直前―裏はキリキリ・表はムンムン

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井上鑑さん作曲の「万葉歌」を田中泯さんが躍る。
そこにセイゴオがどうからむのか。
リハーサルの一瞬一瞬から目が離せない。

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ステージを踏みしめる泯さんの裸足。
泯さんはこの日のために、2週間ほど前から絶食してきた。

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音の魔術師、井上鑑さんの手。年末年始も無休で、
4曲の「万葉歌」のほかに泯さんのためのダンス曲もアレンジ。

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楽屋では、岡野弘彦さんと荒井正吾知事が歓談。
右はセイゴオと岡野さんのキューピッドこと堀口裕世さん。

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舞台袖を陣取る映像チームの機材の要塞。
藤本晴美将軍のもと、複雑きわまりないプログラムの念入り確認。

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セイゴオも楽屋に籠って集中しはじめた。
こういうときのセイゴオにうかつに触れると大ヤケド。

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列をなしてホール開扉を待つ来場者。
前評判の高いイベントとあって、ホワイエも熱気に満ちている。


2. 歌のちからと踊りのいのち―人麻呂になったセイゴオ

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鑑さんのピアノソロ「ナラジアのテーマ」とともに開演。
大入り満員の客席後方には立ち見客も。

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荒井知事とセイゴオのかけあいで、古事記編纂1300年の意義を語る。
知事の「古事記には原日本人の霊性を感じる」という言葉を受けて、
セイゴオが即興で「神名畳語ラップ」を実演、古事記の言霊を再現して
会場を沸かせる。今日のセイゴオ、なんだか調子いい!

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岡野さんが登場するだけで、ホール全体が慰撫されるような存在感。
破裂音の多い古代日本語の発音を再現して
「古事記」の歌謡性を語ったくだりには、セイゴオも衝撃を受けていた。

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額田王による大和への訣別の歌を通して、
喪失とうつろいが生み出す「うたものがたり」の世界をめぐる。
3・11後の日本を鎮める岡野さんの和歌は、
「したたりて青海原につらなれる この列島を守りたまへな」

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奈良の薪能の映像に浮かび上がる泯さんのシルエット・ダンス。
スクリーンがあがり、万葉文字を背景に、
鬼神のような形相の泯さんが乱舞する。

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生命力に満ちた古代のダンサーたちの無数のカラダを、
全身・全皮膚に感じながら踊ると語る泯さん。
セイゴオは、この日、ステージ上でしばしば泯さんの顔に
見惚れてしまったらしい。
楽屋で「本当にいい男だよ。困ったよ」と妙なことを漏らす。

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「あかねさす 紫野行き標野行き 野守は見ずや君が袖振る」(額田王)
「言霊の八十の巷に夕占問う 占正に告る妹は相依らむ」(人麻呂)
セイゴオの超編集朗詠に乗って、泯さんが躍る。
即興的なコラボレーションの間合いのなかで、
泯さんが花嫁衣裳の額田王に、セイゴオが人麻呂に見えてくる。
泯さんのマネージャーでダンサーの石原志保さんは、
この二人のコラボにしびれまくったらしい。


3. めくるめく「万葉歌」、そして「NARASIA」へ

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井上鑑さんが客席後方から、さざ波のような音と鈴音を奏でながら登場。
ユーラシアの果てからやってきたマレビトのようだ。
そのままキーボードに向かい、演奏しはじめたのは舒明天皇の「国見歌」。
多重録音による超絶的な音色と声色のなかに、ホーミーと馬頭琴が
印象深く響く。

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再び岡野さんが登場し、鑑さんの演奏について、
「国見歌が国偲ぶ歌にもなるということを感じた」と、
泯さんの踊りは「まさに弱法師だった」と語る。
鑑さんは国見歌の曲作りについて、
「松岡さんから意味に捉われず言葉を自由に扱っていいと
言われたことが最大のヒントになった」と明かしていた。

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「淡海の海 夕浪千鳥 汝が鳴けば 情もしのに 古念ほゆ」(人麻呂)
鑑さんはこの和歌にカザルスの「鳥の歌」の
インスピレーションを得て曲をつくったそう。
その曲想に感応しながら泯さんの身体が動く。
「鳥の歌」のフレーズが出てきたときには、
思わず涙ぐんだという裏方スタッフも。
望憶の念い(おもい)は古今東西を超えるのだ。

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人麻呂に続いて鑑さんの万葉歌「うつせみは 数なき身なり 山川の
さやけき見つつ 道を尋ねな」(家持)を踊った泯さん、
「踊りは、まさに身体をうつせみにすること」と語る。

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鑑さんは、どんな楽器でも、演奏する前には
言葉を探すことを大切にしていると言う。
曲づくりでは、頭で無理に考えて納得する音楽では
ないものをめざしてきた。

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「沫雪の ほどろほどろに 零り敷けば 平城の京し 念ほゆるかも」(旅人)
このシーンをどうしても真っ白にしたかったという
デザイナーの美柑和俊さんの念が通じた。

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最後に、鑑さんのバンドネオンの演奏が導きながら、
1年前の「グランドフォーラム」の
子どもたちの「ナラジアの歌」の合唱シーンを再演。
「ならじあ あじあ まほろば ならあじあ
 うみをこえ ひびきわたる うた」。
聞けば聞くほど名曲だ。セイゴオも思わず歌いだす。


4. 裏方冥利に尽きました

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終演後、出演者を囲んで全スタッフが揃って記念撮影。
ヘンコーケン流儀で「はい、チーズ」の代わりに「ものがたり!」。
列車の運行表並みに込み入った演出プログラムを仕切った、
藤本さん率いるMGSさんご一党、飯島髙尚さん率いるポマト・プロさん
ご一党、会場デザインを手がけた真保毅さん・東亨さん、
そして「松岡組」の面々も満足げ。裏方冥利に尽きました。

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続いては、知事を囲んで出演者・関係者の懇談会。
場の中心は、生ける記紀万葉のような岡野さんの話と、
超人的な演出の秘密を明かす藤本さんの話。

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なんといっても、この岡野さんの笑顔と人柄に、
出演者も裏方もすっかり魅了されたようだった。
岡野さんも「男盛りの皆さんとごいっしょさせていただいて、
とても楽しかったです」とご満悦。
「ぼくも皆さんみたいにお髭をはやしてみようかな」と、
スタッフの一人に眼を輝かせて話していたそうです。


*写真:川本聖哉
*レポート:松岡正剛事務所(太田+和泉+栃尾)

投稿者 staff : 2012年2月11日 22:23