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2011年11月14日

Diary セイゴオ揮毫「大毘盧遮那殿」の落慶法要

 11月3日、栃木市の満福寺で開創750年を祝う法要とともに、新本堂「大毘盧遮那殿」落慶法要などが営まれました。満福寺住職の長澤弘隆さんは、真言密教僧のネットワーク組織である「密教21フォーラム」創設時から事務局長を務め、これまでセイゴオ監修の数々のイベントやビデオ『蘇える空海』をプロデュースしてきた方。
 長澤さんからのたっての依頼でセイゴオが揮毫した「大毘盧遮那殿」の扁額も、この日お披露目されました。完全に古建築の技術でつくられた本堂と、まばゆいばかりの密教荘厳の空間に映えて、セイゴオの筆勢を見事に再現した金色の文字たちが輝いていました。

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落慶法要を迎えた新本堂「大毘盧遮那殿」。
ご本尊と本堂前に建てられた角塔婆が、五色の結縁の紐で結ばれている。

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金彩が施されたセイゴオの書による扁額。畳一枚分もの大きさがある。

 

 長澤さんからセイゴオに新本堂の扁額の揮毫の依頼があったのは2年前のこと。これまでも何度か看板や特別な催しのために揮毫を頼まれてきたセイゴオも、歴史のある寺院の、それも新本堂のための書を引き受けるには、相当の覚悟が必要だったようです。

 昨年7月には、はるばる栃木に出かけ、上棟式を終えたばかりの本堂の工事現場を見学。このとき、向かい側に立つお堂の扁額が、セイゴオの敬愛する中村不折の手によるものであることを知り、さらに覚悟をしなおしました。「とてもとても、ぼくでは役者不足ですよ。本当にいいんですか」と、長澤さんに念押しをする場面も。

 セイゴオの悩みは、ほかにもありました。畳一畳ぶんもの扁額の大きさもさることながら、「大毘盧遮那殿」という六文字の結構に、実際に筆を手に取る前から困難を感じていたようです。「字画が多いからですか」と聞くスタッフに、「それもあるけど、『大』の字に苦労しそうなんだよ」。

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建築中の本堂内部を長澤さんに案内していただく(2010年7月)。

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セイゴオが感激しつつ緊張した、中村不折の扁額。

 8月に入り、長澤さんから届いた清書用の和紙のほかに、自前で何十枚もの和紙を用意し、いよいよその困難に挑戦しましたが、なかなか思うような「大」の字が書けないようでした。赤坂ゼアビルの大広間に反故の山を作りながら、大小の筆を取り換え持ち替え、心待ちにしている長澤さんからの催促に励まされる日々。
 そうして、彼岸の入りの直前に、やっと2枚の清書が完成しました。「玄月 松岡正剛」と、雅号と名前を記し、3種類の落款を散らした、いずれもセイゴオらしい味の書です。さっそく「どちらでも、お好みのほうをお使いください」とのセイゴオのメッセージとともに、長澤さんのもとに届けられました。

 年明け早々、本堂完成の知らせとともに、無事に正面に掛けられた扁額の写真が長澤さんから届きました。ついで、落慶法要が6月に決定しましたが、そこへあの、3月11日の東日本大震災。幸い新本堂にも扁額にも被害はなかったものの、屋根瓦や灯篭や墓石の落下・倒壊があったとのこと。そして諸事情を鑑みて、長澤さんはやむなく落慶法要を延期されたのでした。

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完成した扁額が新本堂正面に取り付けられた(写真は長澤さん提供)

 長澤さんがまとめられた資料によると、満福寺開創は鎌倉時代にさかのぼり、江戸時代には幕府の庇護を受けて、大門とともに御成門を備えた大伽藍を形成するにいたったそうです。ところが幕末の大火によって諸堂ことごとく灰燼に、さらには廃仏毀釈の時代をへて、一時は無住寺となるまでに衰退。そこへ、伽藍復興を志して、富山から晋住してきたのが長澤さんの曽祖父でした。以来、先々代、先代と、復興の悲願を継承し、若くして住職となった長澤さんが境内整備を精力的に進め、ついに開創750年の記念の年に、堂々たる新本堂の落慶を迎えるにいたったとのことです。

 震災のために約半年遅れとなったものの、11月3日の文化の日、セイゴオ揮毫の真新しい扁額を掲げた新本堂で、代々先師先徳報恩回向の法要、檀信徒先祖代々総回向の法要とともに、開創750年慶祝と新本堂落慶の法要が厳かに営まれました。東京から駆けつけたセイゴオも、来賓席でその一部始終を見守り、続いて行われた記念式典では、代々住職の悲願を実現した長澤さんの意志と行動力を称える祝辞を述べました。

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ご本尊の大日如来と大壇。清浄な光に包まれた密教荘厳空間。

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法要前に談笑する長澤さんとセイゴオ。

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回向文を読み上げる長澤さん。空海の時代の正装に近い法衣とのこと。

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長澤さんの偉業を称える祝辞を述べるセイゴオ。

 ところで、この日セイゴオが初めて知ったことですが、じつは長澤さんにお届けした2枚の清書のうち、扁額につかわれた1枚は、新本堂内のちょうど扁額の裏側に、きれいに額装して飾られていました。さらにはもう1枚のほうも額装して、客殿に飾られていたのです。「ええっ、こんなに出すんですか」と真顔で恐縮するセイゴオに、長澤さんは満願を遂げたかのようなやわらかい笑顔で「寺宝ですから」と答えていらっしゃいました。

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本堂内に掲げられているセイゴオ直筆の書。

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客殿に飾られている、もう一枚の書。


レポート&撮影:太田香保

投稿者 staff : 2011年11月14日 17:00