セイゴオちゃんねる

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2009年6月26日

News FMラジオ「学問ノススメ」に出演

 6月28日(日)と7月5日(日)、ラジオ版課外授業プログラム「学問ノススメ」にセイゴオが登場します。パーソナリティはパンチの効いた重低音が魅力の蒲田健さん。古美術鑑定家、恐竜ジャーナリストからメダリスト、アルピニストまで、多種多様なスペシャリストを迎えての、テンポのいいトークを楽しめる番組です。

 セイゴオ・トークの収録は、近著『連塾方法日本』『多読術』『NARASIA』の紹介を軸に、夜中3時まで眠らないというセイゴオのライフスタイルから「方法日本」を体得するためのテクニック、そして「知る」という行為の方法的解説まで、次々と話題を切り替えながら、予定を大幅延長してなんと2時間半にわたって行われました。

 数日後、蒲田さんから「松岡さんに打ちのめされました。脳の筋肉痛と呼べそうな状態がつづいています」という興奮気味の熱い手紙がとどきました。一方、生来モノマネ好きのセイゴオは、蒲田さんの声音と語り口をすっかりマスターしたようす。事務所では、やにわに蒲田語りを演じてはスタッフを絶句させて楽しんでいます。

 放送は6月28日(日)と7月5日(日)午前9時から、放送エリアは東京をのぞく14の地方FM局。なお、7月5日の放送終了2週間後、ポッドキャスティング版で収録の様子すべてをノーカットで聞くことができるようになります。

■「学問ノススメ」OA日時

FM福島(6月28日、7月5日、9:00-)
FM群馬(6月28日、7月5日、19:00-)
FM静岡(7月3日、7月10日、4:00-)
FM福井(6月29日、7月6日、21:00-)
FM岐阜(6月28日、7月5日、9:00-)
FM三重(6月28日、7月5日、9:00-)
FM滋賀(6月28日、7月5日、9:00-)
KISSFM(兵庫)(6月28日、7月5日、9:00-)
FM山陰(6月28日、7月5日、9:00-)
FM岡山(6月28日、7月5日、9:00-)
FM山口(6月28日、7月5日、9:00-)
FM徳島(6月28日、7月5日、9:00-)
FM鹿児島(6月28日、7月5日、9:00-)
FM沖縄(6月28日、7月5日、8:00-)
(急な番組編成の変更によりOA日時が変わる場合もあります)

■ポッドキャスティング版サイト

http://www.jfn.co.jp/susume/ (セイゴオのトークは7月中旬更新予定)

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投稿者 staff : 14:53

2009年6月24日

Diary 椿座「日本の語り方」第6回のサワリレポート

 「日本の語り方―ジャパノロジーの系譜」をテーマに、福原義春さんを聞き手としてセイゴオが奔放な談話を展開してきた「椿座」第3季が、6月12日に最終回を迎えました。古代・中世・近代と歴史の流れを追いながら、それぞれの時代を象徴する人物を取り上げてきた本シリーズの締めくくりのために、数日前に「いよいよ昭和史です。ついては、福原さんとたっぷり対話型で進めたい」というラブレターを福原さんに送っていたセイゴオ。当日も、まずは昭和6年生まれの福原さんが幼年期に見聞きした日本の戦争と敗戦についての話をうかがうところから始まりました。
 以下、会員限定の会につき、おいしいところをサワリだけご紹介。

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セイゴオ:いま100年に一度の不景気と言われてますが、福原さんのお生まれは、まさに世界大恐慌の時代でしたね。

福原:私の一生は、世界大恐慌に生れ不景気で終わる(笑)。戦争のみじめさをいやというほど体験した世代です。むしろ恐慌が起こることなんて驚かない。
 軍部の台頭や松岡外相の動向や日独同盟。そういったことを、小学生だった私は「毎日小学生新聞」を読んで知っていた。日本がどんどん悪くなっていることを子供なりにわかっていた。
 もっとも記憶に残っているのは、昭和11年の2・26の日のこと。その日は東京にかつて体験したことのないような大雪が降った。朝起きると、物音ひとつしないんです。そして周りの大人たちも雪に閉じ込められながら、「事件」について何も語ろうとしない。その「物音のしない朝」が今も忘れられないですね。
 もうひとつ、中学校に入学するなり長野に疎開させられたんですが、その前夜の荷造りが済んだ部屋のさびしさ、みじめさが強く焼き付いています。

松岡:福原さんのような体験者に「ナマ」の話を聞く機会がどんどん失われていくなか、世界恐慌から敗戦までの昭和をどう捉えるかということが、ますます難しくなってますね。

福原:軍部の勝手は子供にも見えていたし、支那事変以降は戦地から手紙がとだえ、誰もが新聞報道のプロパガンダに疑念をもっていた。でも家の中では文句を言っても、外では黙るという時代でした。近代化日本の欺瞞が日本中を覆っていた。日本人は今だにあの戦争時代を総括してませんよ。

松岡:あのとき日本は封建主義の時代以下の価値観になりさがった。戦争に敗れたことでアメリカの民主主義を受け入れましたが、そのために日本人は、今だに民主主義や「自由」というものについてあまり理解をしていないんじゃないでしょうか。

福原:昨今の裁判員制度の国民の受け取り方も同じですよ。

松岡:当時も現代も、結局、日本が何に巻き込まれているのかが不明なままなんです。私は昭和19年生まれの戦中派ですが、戦争の記憶自体はありません。それでも戦後の闇市の光景は覚えてますし、日本がそこからどのように立ち上がって高度成長を迎えていったかは同時代的に見ていた。
 戦後の日本がまたしても「まちがい」をおかしたと感じたのは、「経済大国」「生活大国」というスローガンを聞いたときですね。

福原:私はあのとき、昭和にはもう残すべきものがないと感じましたね。

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福原:日本は欧米からいろいろなことを取り入れましたが、政治・経済ではもうアメリカやヨーロッパから学ぶべきものはありません。ヨーロッパの文化もその香りを失いつつある。本来、資本主義には、プロテスタンティズムの勤勉精神があったはずなんです。それが日本人の勤勉さとうまく合った。

松岡:日本はその勤勉精神や誠実さをないがしろにしてしまった。

福原:戦後まもない日本は民主主義だけではなく、じつは共産主義や社会主義の波頭も受けていた。当時の文化人や演劇人の多くは左翼でした。けれどもそういった精神的なリーダーたちが、パージされてどんどんいなくなった。

松岡:いっさいのイデオロギーとは無関係になった日本に、いまだに根強く残っているのがビューロクラシー(官僚主義)ですね。これは明治維新後、コネ社会の問題を超えるために用いられた「有司専制国家」からきているものですが、ここには何か日本的特性がひそんでいると見たほうがいいんでしょうか。

福原:私は資生堂を通じて中国とフランスの官僚とはずいぶん付き合ってきましたが、世界的に見ても日本の官僚は優秀だったと思います。いまの官僚の問題は、省庁タテ割りという構造とともに、責任回避と自己保身のために部下にオーダーを出さないトップの問題が大きい。的確なオーダーを受ければ有能な人たちなんですよ。

松岡:小泉政策のように「すべてを民に」は単純すぎますね。官のよさも見直したほうがいい。この先「道州制」を進めるにも、官の力が欠かせないでしょう。

福原:道州制は、小泉時代に道と市町村の二層制でいくと決定しましたが、日本の場合、江戸時代の「藩」の単位を基礎自治体とするほうがいい。そういう考え方もあります。

松岡:「藩」という単位は歴史に根ざしてますからね。いま経団連や経済同友会ではどういった議論が進んでいるんですか。

福原:いまの経団連も同友会もろくに意見を出さないし、つまらないですね。経済界にも大物リーダーと呼ばれる人が少なくなってしまった。いわゆるリベラル・アーツを失った世代の経営者ばかりですね。

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 そのほか、戦後日本に生まれたヒーロー、ヒロインが抱えた「闇」と、そのような「闇」のエネルギーを吸収しながら開花した前衛アートをめぐる話、たった2人だけ北京オリンピックに公式招待された日本人の一人となった福原さんが見た現代中国の強さなど、なかなか表には出せないようなとっておきの話が、約5時間にわたって縦横無尽に展開しました。
 ラストは、「塾生」として参加した小堀宗実さん、エバレット・ブラウンさん、緒方慎一郎さんたちが、それぞれ鋭い視点の感想を語り、全6回にわたったちょっと辛口で極上のジャパノロジー対談がおひらきとなりました。

* 「椿座」は今秋から装いもかえて第4季を開講予定。連志連衆會会員のためのプライベートサロンですが、入会希望者に限り特別聴講も可能です。問い合わせは、編集工学研究所内・連志連衆會事務局(TEL:03-3587-9201)へどうぞ。

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福原義春さんの著書

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セイゴオの著書

投稿者 staff : 23:24

2009年6月22日

Daiary 祝・萩尾望都さん漫画家40周年

 6月11日、萩尾望都さんの漫画家40周年記念パーティが東京會舘で開催され、セイゴオと松岡事務所の面々がお祝いに駆けつけました。セイゴオの「少女ごころ」の先生でもある萩尾さんとは、5月27日に開催された「連塾JAPAN DEEP3」でも、萩尾マンガに潜む少女性、異能性、普遍性、そして異界性をたっぷり交わしたばかりです。
 ピーコックグリーンとブラウンのシフォンワンピースに身を包み、ティアラをつけた萩尾さんがステージに登場すると、発起人のちばてつや、松本零士、天野喜孝、松本隆、夢枕獏たち男性陣がそろって開演のご挨拶。夢枕さんの「萩尾さん、ここまできたら描きながら死んでください!」の言葉に会場もセイゴオも盛大な拍手を贈りました。つづいて、会場にシャンパンがサービスされ、萩尾さんを世に送り出した名編集者・山本順也さんの音頭で乾杯。
 会場は、里中満智子(1132夜『女帝の手記』)、安彦良和(430夜『虹色のトロツキー』)、魔夜峰央、青池保子、永井豪、清水玲子、さいとうちほ、吉田戦車、岡野玲子、二ノ宮知子、東村アキコなどなどの漫画界のスーパースターたちや、よしもとばなな(350夜『TUGUMI』)、小谷真理(783夜『女性状無意識』)、野田秀樹、甲斐よしひろ、手塚眞などアーティストたちに埋めつくされ、セイゴオも改めて萩尾さんの地母神的影響力の大きさに感じ入ったようす。
 セイゴオが『遊』を創刊した頃、『ポーの一族』を読んで従来の漫画とは全く違ったコマ割り、テーマ、ストーリー、セリフに衝撃を受けたということは「連塾」でも明かしていましたが、じつは松岡事務所の太田香保、栃尾瞳も萩尾作品なら全制覇しているほどの大ファン。おみやげにサイン入りの新作『レオくん』と名作『銀の三角』を頂いて、パーティが終わってからも松岡事務所では萩尾作品談議が喧しく続きました。

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少女漫画のカリスマ萩尾望都センセイとセイゴオ

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『女帝の手記』の里中満智子さん、『陰陽師』の岡野玲子さんと一緒に

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一冊一冊に日付とサインが入った『レオくん』と『銀の三角』

投稿者 staff : 22:49

2009年6月12日

News 平城遷都1300年記念事業経済フォーラム

7月8日(水)、丸の内マイプラザホールで開催される「平城遷都1300年記念事業経済フォーラム」にセイゴオがモデレーターとして出演します。

このフォーラムは、奈良県と日本経済新聞社の共催で、平城遷都1300年記念事業のひとつである「弥勒プロジェクト」の一環として行われるもの。1300年にわたる日本と東アジアの歴史を見つめなおすとともに、未来の経済社会の可能性をさぐります。

なお、セイゴオの編集構成による『平城遷都1300年記念出版 NARASIA 日本と東アジアの潮流』(6月8日発売)も、早々に重版が決定、大きな反響を呼んでいます。


平城遷都1300年記念事業経済フォーラム
「2010年からの経済社会―日本と東アジアの未来を考える」

 2010年、日本は平城遷都1300年という節目の年を迎えます。平城京は、シルクロードの交流を背景に日本に初めて誕生した本格的な首都でした。以来1300年にわたって、日本はこの平城京をモデルとしながら、中国を規範とする東アジア型グローバリズムを取り入れつつ、独自な方法によって風土に根ざした日本流の経済社会を育んできました。
 いま、世界的な経済危機のなか、新しい経済社会のヴィジョンを築くことが急務となっています。本シンポジウムでは、日本のすぐれた歴史的方法を見直し、東アジアとの関係性を再編集することによって、日本と東アジアの展望を拓きます。

<主催>  奈良県・日本経済新聞社
<後援>  (社)平城遷都1300年記念事業協会ほか

<日時>  2009年7月8日(水)18:30~20:45(開場18:00)
<会場>  丸の内MYPLAZA(JR東京駅徒歩5分)
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-1-1 明治安田生命ビル
JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅 国際フォーラム口より徒歩5分
地下鉄千代田線二重橋前駅 3番出口直結

<出演者>
小林陽太郎氏(富士ゼロックス相談役最高顧問)
中谷巌氏(多摩大学ルネッサンスセンター長)
武藤敏郎氏(大和総研理事長)

モデレーター:松岡正剛(編集工学研究所所長)

<入場料金>  入場無料(事前申し込み制) 定員330名


■参加お申し込み方法
ハガキ、FAX、インターネットのいずれかの方法で、事前にお申し込みください。折り返し受講票をお送りします。応募者多数の場合は抽選のうえ、受講券をお送りします。

◇ハガキまたはFAXでのお申し込み
 郵便番号、住所、氏名、企業・団体名、部署・役職、電話番号を明記のうえ、下記宛にお送りください。

 ハガキ 〒540-8588 大阪市中央区大手前1-1-1 
 日本経済新聞社大阪本社クロスメディア大阪営業局H係

 FAX 06-6941-8232

◇インターネットでのお申し込み
 下記のホームページから、必要事項を入力のうえお申し込みください。
  http://www.nikkei.co.jp/adnet

*お申し込みいただいた個人情報については、受講券送付など本シンポジウムの実施目的 にのみ利用いたします。

◇申込締め切り 2009年6月24日(水) 

■お問い合わせ 受付時間 10:00~17:00 土・日・祝を除く
*受講、お申し込み方法などに関するお問い合わせ
 日本経済新聞社 クロスメディア大阪営業局
 TEL:06-6946-4229

*内容に関するお問い合わせ
「平城遷都1300年記念経済フォーラム」事務局
 〒107-0052 東京都港区赤坂7-6-64 編集工学研究所内
 TEL:03-3568-2100

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投稿者 staff : 22:59

2009年6月 9日

Publishing 水無月セイゴオアラカルト

■金井壽宏氏×セイゴオ 日本的リーダーシップを語る

 リクルート『Works』誌上で日本のリーダーシップ研究の第一人者である金井壽宏さんとセイゴオが対談。グローバル資本主義とは違い「デュアル性」を持つ日本のリーダーシップの本来を語るセイゴオに対し、組織に「ナラティブ・リーダーシップ(物語を通じてのリーダーシップ)」が必要だと答える金井さん。人や物の間を繋ぎ、目的に向かうプロセスごと創りだすような、場や関係によって変化する「なる」リーダーシップの可能性を語り合っています。

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『Works』№93 (隔月偶数月発行)
発売 2009年4月10日
出版 リクルートワークス研究所
定価 700円(税込・送料無料)
   *購入希望の方は下記アドレスのページよりお申し込みください。
    http://www.works-i.com/flow/works/subscribe.html

■「面影の奈良」をめぐって

 日本唯一のホテル客室情報誌『JAPAN NOW』の奈良特集にセイゴオが登場。真名の奈良、東アジア文化の執着点である奈良、「日本」誕生の地の奈良、能楽と茶の湯を生んだ奈良、極東の国際都市奈良。1300年の都・奈良に潜む多様な日本の原型をめぐりながら、日本と東アジアのこれからのために、奈良の面影に潜む方法を取り出すことの必要性を解いています。

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『JAPAN NOW』2009-2010 (年1回発行)
発行 2009年4月23日
出版 ジャパン・ナウ
定価 2000円(税込・送料別)
   *購入希望の方は以下の電話またはFAXでお申し込みください。
    TEL03-3465-5826 FAX03-3465-5254

■眼鏡と読書の知的な関係

 セイゴオの愛用品でありトレードマークでもある眼鏡。発売中の『眼鏡Begin』では、フラジャイルなオブジェ・眼鏡へのオマージュを、眼鏡をかけた知識人へのあこがれや眼鏡を武器にした読書スタイル、そして眼鏡に似合うお気に入りの10冊とともに紹介しています。

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『眼鏡Begin』vol.6 (年2回発行)
発売 2009年5月23日
出版 世界文化社
定価 890円(税込)

投稿者 staff : 10:19

2009年6月 3日

Report 連塾 JAPAN DEEP 3 異能にたずね、異界をさぐる

■法華経に徹して「連塾」に入る

 5月27日、第1300夜を達成する節目の「千夜千冊」に長文の『法華経』をアップしおえたセイゴオは、「さあ、いよいよ連塾だなあ」と息を吐いた。
 3日後に控えた「連塾」の準備はすでに3ヵ月以上も前から始まっていた。5月に入ってからは、進行管理の和泉佳奈子、事務局を取り仕切る渡辺文子からもたらされる大小のジャッジメントに追われ続けてもいた。編集工学研究所の太田剛らの映像チームやグラフィック担当の美柑和俊も着々と制作物を仕上げていた。しかし、本番の舞台の上では7時間ものトークライブをたった一人で仕切らなければならないセイゴオ自身の“支度”は、まだ何も手がつけられていなかった。
 第1300夜は法華経にする。「連塾」前に第1300夜を書きあげる――。誰に約束したわけでもないことなのに、『法華経』を書き終えないかぎり「連塾」を迎えることができないとでも言うように、みずからを呪縛しながら一人書斎に籠って夜を徹する数日が続いた。「うーん、3回書き替えることになったなあ。宗教テキスト論にしたくなかったんでね」。

 「さ、いよいよ連塾だ」。
 法華経が手離れするなり、いつものようにレジュメづくりが始まった。萩尾望都・松本健一・横尾忠則の3人のゲストとの対話のために、それぞれの作品や著作に目を通しながら、そこに顕在するキーワードと潜在するイメージを探っていく。メディアの対談とは違い、ライブの対談はつねに予測不可能性を孕んでいる。セイゴオが深く信頼し敬服する異能者たちが相手であるからこそ、その凄みをステージ上で余すことなくプレゼンテーションしてもらうことができるかどうかは、セイゴオの質問ひとつ、相槌ひとつにかかってくる。そのために必要な空間づくりは、演出・照明の藤本晴美さんがプロフェッショナルなセンスと技術で預かってくれているのだが、その空間に比類ない言葉を刻印していくことを、誰よりも藤本さんがセイゴオに強く要請し続けている。

 前日の5月29日は仕込みとリハーサル。午前9時から総勢70人近くの全連塾スタッフが、大量の機材・備品とともに会場の品川グランドホールに結集し、設営が始まった。午後4時、セイゴオが会場入りしたときには、品川スカイクレーパー街の中の無機質なホール空間は、すっかり「連塾」にふさわしい密度と陰影をもった「異界」に変わっていた。それでもやはり、最後に残されるのはセイゴオの舞台支度に合わせた演出の詰めである。途中、会場下見に訪れた萩尾望都さんとの段取り確認を含め、照明・音響・映像チームとの緻密なリハーサルが10時過ぎまで続いた。

 「結局、昨夜はあまり眠れなかったよ」。
 5月30日、午前10時。セイゴオが数十枚にもおよぶレジュメと資料を手に、再び会場入りした。気遣うスタッフたちの半数も、昨夜のうちに生じた段取り変更や制作物の修正で徹夜しているはずだ。みんな短いコトバでしか合図をしないが、けれどもこれこそが、「連塾 JAPAN DEEP」本番直前の、いつもの光景なのである。

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■異能が迎え、異界に誘う

 グランドホールのエントランスには、恒例の、申込者一人一人の名前を記載した特製ファイルが並ぶ。その数、350部。駅のコンコースのように広いホワイエ空間には、「連塾」の6年間の時空を物語るポスターや記念写真、千夜千冊などが展示され、ホールへの導線の入口には、セイゴオの手による幽遠な「異能」「異界」の書が並び立ち、結界へのアプローチを示している。
 午後1時40分、ホール開場とともに、参加者が続々と照明を落とした「異界」へと吸い込まれていった。

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 満席のホールに坂本龍一の「アダージョ」が流れ始める。4分40秒にわたってピアノ音が聞こえるだけの静かなオープニングに続き、「連塾 JAPAN DEEP」第1回・第2回のダイジェストが高速でプロジェクトされる。舞台に地明かりが入ると、上手(かみて)に「異能にたずね、異界をさぐる」、下手(しもて)に「連塾」の、黒地白ヌキのバナーが浮かび上がる。ここで連志連衆會代表理事の福原義春さんが登壇。
 来年80歳を迎えるという福原さんは、20年にわたって松岡正剛の虜になっていると語る。「今の日本は顔を失ってしまった。今の日本はつまらない。“日本という方法”を松岡さんとともにもう一度さぐること、それがこの連塾の狙いです」。

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 福原さんのメッセージを受けて登場したセイゴオは、「かつて私たちの社会にはたくさんの異界があった。今や異界は映画や物語の中にしか見つけられないものになっている」と語り、昨今の「フラット化する社会」に疑問を投げかける。スクリーンには、どこか異様で懐かしい映像集が流れる(タルコフスキー、グリーナウェイ、デレク・ジャーマン)。
 続いて黒板に甲骨文字を描き、「異」という字は鬼が走り過ぎざまにバッと正面を向き手を上げた姿をあらわすと説く。「異」は人々に「畏れ」をもたらすが、ここに「羽」を加えれば「翼」という字にもなる。「異なるものがいつか変化し翼を持って飛び立っていくことを、私たちはすっかり忘れてしまったのではないか」。

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 一人目のゲスト萩尾望都さんの迎え入れはスクリーンいっぱいにプロジェクトされた愛猫レオ君の写真。ネコ好きの萩尾さんに和んでもらうための藤本演出だ。デビューまもないころの『塔のある家』から最新作『バルバラ異界』までの萩尾ワールドが、作品画像とセイゴオのインタビューによってじょじょに繙かれていく。
 萩尾さんは、フィリップ・K・ディックの「世界が消えていく」という世界観や手塚治虫の「救いに至らない物語」に強く惹かれたという。じつはその奥にはずっと親への愛憎があったのだという。しかし萩尾作品のもつ普遍性・神話性は、親子の葛藤という個人体験をはるかに超えたものに昇華されている。その秘密は、やはり異界と親しむ異能性にあるようだ。
 「だって、人間は、言語と数字と神様をほぼ同時期に獲得しているんですよ。人間は何かを埋めるために神をつくったのではないでしょうか」。自分の生み出したキャラクターたちに、父殺しや子殺しや神殺しといった人類の宿命を負わせてきた萩尾さんだが、その語り口は終始やわらかく、ふくよかな声音はまるで大地母神を思わせる。

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 松本健一さんはセイゴオが今もっとも深く話し込みたい異能者である。藤本さんがセイゴオに要求してきたトップギアのスピード感に松本さんを引きずり込むかのように、「なぜ北一輝に関心をもったのか」という直球の質問で対話が始まった。早くも孟子の「湯武放伐論」が俎上に上った。しかし松本さんは萩尾さんの話に触発されたのか、「美しく死ぬこと」に憧れて「スプートニクの実験犬にしてほしい」とソ連大使館に手紙を書き新聞沙汰になったという意外な少年時代のエピソードを明かしもした。
 少年のデカダンスはやがて「散華の美学」を求めて保田與重郎との出会いに、さらにそれを超えていくための自己否定から竹内好との出会いに転じていった。加えて、群馬の米軍基地近くで育った幼年期に芽生えていたナショナリズムとパトリオティズムの未分化な感情は、やがて高度成長期の日本の経済ナショナリズムを見つめるリアリズムの精神へと転じていった。
 北一輝の発する光源を「草莽」(そうもう)の志から読み解きながら、昭和天皇と三島由紀夫と司馬遼太郎のトライアングルを独自に喝破する松本日本論を、セイゴオは時間の許すかぎり加速させ続けた。

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 午後5時。濃密な二組の対談が終わり、ホールを埋め尽くしていた参加者がいっせいにホワイエに流れ出る。長丁場の「連塾」に集中しつづける参加者のために、スタッフが選りぬいた軽食が供される。これもまた恒例の「交換おつまみ連餉」。この日のメニューはとんぶりをあしらった蕎麦、鴨ロースト、つくね、小芋煮、くずまんじゅうなど。また、6月6日の書店販売を前に『平城遷都1300年記念出版 NARASIA』が特別に先行販売され、さっそく買い求めた方々がセイゴオ畢生の「見開き(ダブルページ)主義」に見入っていた。

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 「交換おつまみ」のにぎわいからホールに戻った参加者は、ここでまたしても藤本演出のどんでん返しによって連塾異界へとあっという間に連れ去られる。真っ赤な照明に染め上げられたホール内にSEALの「スタンド・バイ・ミー」が響き、ステージの上ではゆっくりと大きな白布と異様な太縄が吊り上げられていく。トークイベントへの出演を拒み続けてきた横尾さんが、連塾出演を承諾するにあたり、盟友の藤本さんに唯一所望したものが、この「首吊り縄」だった。
 「死と再生へのイメージはグラフィックデザイナーのころからあったものなのか」という質問に答えて、死に対する恐怖感とともに、夭折の画家への憧れもあったというアンビバレンツを吐露する横尾さん。三島由紀夫に「横尾の無礼は天下の無礼」とまで言わしめた独特の存在美学を、セイゴオは「あえて愚問を差し出す」という奇策で迎えようとしていた。横尾さんが自分の作品について、どれくらい真意を語ってくれるかという賭けでもあった。これは画家が好んでやることではない。
 あろうことかレーザーポインターまで持ち出し、作品のディテールを指しながら横尾さんを誘いこむセイゴオに対し、ときに言葉に詰まり「もう説明したくない」と言い放ちながらも、横尾さんはしだいにタブロー対話という新ゲームに深入りしながら加担していった。

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■未知なる菩薩と走る鬼

 午後8時。7時間におよんだ「JAPAN DEEP」がいよいよ暮れていく。3人のゲストの異能を調弦しつづけたセイゴオのテンションもいよいよ限界に近づいている。しかし、ホール内は清澄な空気で満たされ、客席の集中力は開演時よりも増しているかのようだ。その空気感に抱かれながら、ラストのソロトークが始まる。


 3日前、「千夜千冊」1300夜を『法華経』で達成しました。書きたかったことは二つだけ、ひとつは前半の「迹門」(しゃくもん)と後半の「本門」のあいだに蝶番のように現れる「地湧(じゆ)の菩薩」の覚悟の意味。そして「常不軽(じょうふきょう)菩薩」という、常に軽んじられている不思議なキャラクターの意味です。
 いま日本は差異ばかりを問題にしすぎています。でも本来のオリジナリティは“似たもの”を選定するところから生まれます。未知なる菩薩は差異を超えて何かをもたらしているはずなんです。
 「千夜千冊」は2年前に全7巻の全集にしました。その第1巻は「遠くからとどく声」というタイトルで、私が少年時代から今日まで感じてきた「異界」を文芸作品を通して表してみたものです。「銀色のぬりゑ」「少年たちの行方」「遠方からの返事」「ノスタルジアの風味」「方舟みちあふち」といったこのチャプタータイトルには、すでに今日の「連塾」の思いのすべてを込めていました。
 今日は、走る鬼が正面を向き、手を挙げるその瞬間のように、3人のゲストを通して「異」なるものを瞬間瞬間に発現させ、それをタブローやマンガの1コマやダブルページにおさめるようにプロジェクトしてみたかったんです。
 では最後に、「連塾」をいつも撮影してくれている異能カメラマンの中道淳さんが、今日一日を撮ってくれた異界写真を見ながら締めくくります。私もいま、初めて皆さんといっしょに見るものです。
 
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(写真撮影:川本聖哉)

投稿者 staff : 02:13

2009年6月 1日

News ワタリウム講演「時空の方舟-白川静の漢字世界観」

 6月19日(金)19:00~21:00、ワタリウム美術館でセイゴオが「時空の方舟」と題して「白川静の漢字世界観」を語ります。

 古代中国・殷の時代まで遡って、甲骨文、金文などの漢字の始原をたずね、「文字は神であった」という視点に基づく独自の自論を展開した白川静さん。約2000年のあいだ聖典とされていた『説文解字』の定義を覆し、86歳のとき、文字三部作『字統』『字通』『字訓』を世に送り出しました。
 2008年11月にセイゴオが書き上げた『白川静』(平凡社新書)は、その厖大かつ深遠な白川静世界の初の本格的入門書として話題となり、10万冊を突破しています。


 「白川静入門―時空の方舟」

●申し込み・問い合わせ

 ワタリウム美術館
  電話03-3402-3001
  e-mail official@watarium.co.jp

●参加費 1500円 

投稿者 staff : 01:02