セイゴオちゃんねる

« 2009年1月 | メイン | 2009年3月 »

2009年2月24日

News セイゴオ 講演・対談のお知らせ

◆京都・相国寺で連続3回ソロ講演

 京都五山第二位の相国寺が定期的に開催している研修会の講師として、セイゴオが「世界と日本の見方」をテーマに連続ソロ講演(全3回)を行います。「グローバリズムと日本」、「一神教と多神教」、「編集的世界観」の三本立て。最近の千夜千冊で『暴走する資本主義』(1275夜)、『変貌する民主主義』(1277夜)、『資本主義はなぜ自壊したのか』(1285夜)と立て続けに展開するセイゴオ節が、ライブでダイナミックに展開します。

■日時  第1回 3月10日(火)「グローバリズムと日本」
       第2回 5月14日(木)「一神教と多神教」
       第3回 7月16日(木)「編集的世界観」
       いづれも 講義13:30~15:00、質疑15:15~16:00
■会場  相国寺(承天閣二階講堂)
     (京都市上京区今出川通烏丸東入相国寺門前前町701)     
■参加費 無料
■申込み 電話 075-231-0301(相国寺教化活動委員会)へ直接お電話ください。

◆ワダエミ×松岡正剛 岐阜県・未来会館で対談

 3月14日、岐阜県県民文化ホール・未来会館で「ワダエミが語る衣装の世界」と題して、第6回織部賞グランプリのワダエミさんとセイゴオが記念対談を行います。黒澤明監督『乱』の衣装デザインにより日本人女性初のアカデミー賞を受賞して以来、活躍の場が海外となったが、日本に戻られたときはしばしばセイゴオに電話がかかってきて時間を忘れての深夜の長電話となる。二人のとまらないトークは必見です。当日は、映画「HERO~英雄~」(2002年)の衣装も10数点展示される予定。

■日時 3月14日(土)
     対談 14:00~15:30(開場1:30)
     展示 10:00~13:30/15:30~17:00
■会場 岐阜県県民文化ホール・未来会館
    (岐阜県学園町3-42)
■参加費 無料
■申込み 電話 058-296-0888(県民文化ホール・未来会館)へ直接お電話ください。

2009022401.jpg

投稿者 staff : 23:17

2009年2月13日

Report ハイパー企業塾高野山合宿抄録

 ハイパーコーポレートユニバーシティー[AIDA]は、次世代リーダーたちのために編集工学研究所が主催する企業塾。セイゴオを塾頭として、格別なゲストとスペースとプログラムで実施する。一貫したテーマは“あいだ(間)”。2005年にスタートして以来、歴史・科学・宗教・哲学・伝統芸能などのさまざまなジャンルを跨ぎながら、その“あいだ”にある関係性に注目してきた。

 2008年10月に開講した第4期は、第1講でセイゴオが粘菌世界から理論物理までを一気に駆け抜け、第2講でカオス研究第一人者の合原一幸さんが「法則はあるのに予測できない」という複雑系の魅力をたっぷり語った。第3講では連塾「浄土に焦がれて羅刹に遊ぶ」に全員参加し、いとうせいこうさん・川崎和男さん・藤原新也さんを相手にセイゴオが引き出す苛烈な「知」の“殺陣”を全身に浴びた。

 そして年明け早々の1月17~18日、空海密教の聖地・高野山を訪ねて期に一度の合宿が行われた。商社・銀行・代理店など大手企業約10社から集った塾生23名にとって、ほとんどが高野山は初体験である。宿坊は、セイゴオと30年以上の親交が続く蓮華定院。ゲストは、金剛峰寺第412座主・高野山真言宗管長の松長有慶さんと、密息という日本古来の呼吸法を自ら探しあてた尺八奏者の中村明一さん。息も凍りそうな厳修の空間で、心身に密教と密息の「方法」を体得する2日間となった。

2009021301.JPG

■1月17日(土)1:30 オリエンテーション(蓮華定院)
 東京から約6時間かけて入山した塾生たちは、蓮華定院に到着するなり、息つく暇なく上段の間に集合した。編集工学研究所大村専務の開会スピーチ、添田住職の挨拶を受けて、セイゴオによる密教ガイダンスが始まった。しだいに、緊張と寒さでこわばった塾生の表情に生気が取り戻されていく。

2009021302.jpg

セイゴオ:高野山には日本を越えたものがあり、かつ日本の本質もここにある。ぼくの最初の本『自然学曼陀羅』(1979年)は、密教がつくりだした「曼陀羅」で自然科学を捉えようという試みだった。「曼陀羅」はシステムであり方法である。
 密教の特徴は、複雑性、多様性、言語性、象徴性、官能性、身体性。これだけ多岐にわたる密教だからこそ、現代にふさわしいメソッドが見つかるはずである。

■1月17日(土)3:00 松長有慶氏の説法(金剛峯寺)
 蓮華定院から雪道を歩くこと約20分、金剛峰寺に向う。金剛峯寺は全国に約3600ある高野山真言宗の総本山。壮麗な桧皮葺の主殿に案内され、本山の重要な儀式が行われるという大広間に着座したところへ、紫衣の松長有慶氏が片手に水晶の数珠を携えて登場。

松長:“比叡山天台宗の最澄”と“高野山真言宗の空海”。両者の違いは、比叡山と高野山という地形から物語ることができる。天台宗は比叡山という山頂がある山地地形に根を下ろし、トップダウン型ヒエラルキーに基づいて発展を遂げた。一方真言宗はそもそも高野山という山はなく、蓮華八葉にたとえられる八つの峰に囲まれたおおらかな盆地地形。どんな宗派も思想も哲学も全てを包み込みながら発展してきた。多種多様な価値観を包含して、それぞれを雑多なままで一つの統一体を作りあげる密教の思想は、価値観が多様化した現代社会に対して意義深い指標をあたえる。密教には公式も模範もない。そのため一人一人が受信機となって宇宙が発する情報をしっかりとキャッチしなければならない。自分自身のアンテナを常日頃から研ぎ澄ますことが必要で、それが修行というものである。

2009021304.jpg

■1月17日(土)5:30 瞑想体験(蓮華定院)
 再び蓮華定院に会場を移し本堂に集合。真言宗に伝わる「阿想観」と呼ばれる瞑想修行を約1時間体験する。呼吸を通して全宇宙との一体感を獲得する修行である。「瞑想は呼吸に始まる」という添田住職の声に導かれながら、塾生たちは目を閉じて姿勢を正し呼吸を整えた。高野山の凛とした空気が身体の隅々まで行き渡ったところで、精進料理を頂いた。

■1月17日(土)7:30 中村明一氏 密息ワークショップ(蓮華定院)
 密息とは呼吸法の一つ。一度の呼気量や吸気量が非常に大きく、かつ吸い込みにかかる時間が非常に短いのが特徴である。中村さんは尺八を通してこの呼吸法に出会ったという。試行錯誤のすえ10年かけて体得すると、尺八の表現力の深さと豊かさがそれまでとは異なる次元になったと感じたそうだ。
驚くべきことに「密息」は特別なものではなく、日本人が古来ごく自然に行っていた呼吸法であり、日本人の身体には今も「密息」の記憶が残っているという。塾生は実際に身体を通して「密息」の入口を体験し、そこから展開していく独自の中村日本論に耳を欹(そばだ)てた。

中村:日本は、山地が多く、傾斜がきつく、湿潤で土が軟らかく、草木が多い国土を持つ。とにかく明治までの日本は足場が悪かった。そのため腰を落とし、膝を曲げた姿勢で安定を保っていた。また男性の着物の帯は、下腹部が前に張った状態で安定するようになっている。日本独自の自然条件と生活スタイルが生んだこの体勢こそ「密息」の基本姿勢である。日本人は普段から「密息」をしていたのだ。
 コツは3つで、腹を張り気味に保つこと、骨盤をいつもより後ろに保つこと、息を吐くときにできるだけ静かにゆっくり長く吐き出すこと。ごくシンプルな身体の使い方さえ分かれば、「密息」の記憶を呼び起こすことができるはずだ。
 「密息」によって体が静止した状態を保てるようになると、速度、温度、音量、空間、感触、香りなど、さまざまなパラメータに対して敏感になる。同時に、必要な情報だけを選り分ける極めて研ぎ澄まされた意識状態がつくられる。

2009021307.jpg

セイゴオ:中村さんが尺八という日本独特の楽器を通して感じ得たもののすべてが、本来の「日本」である。尺八のルーツは中国の縦笛(リコーダー)。世界的な傾向としては、縦笛は次第に横笛になり、穴を小さくして指で覆いやすくした。ところが、日本は縦笛のまま、口の部分をもっと太くし、穴ももっと大きくして、あえて指でふさぎにくくした。そのため、オンとオフのようなデジタル式に音が出ないかわりに、中間音を操る技を芸術の域まで巧みにした。尺八の音は、多元のひろがりと無限の組み合わせをもつ。

■1月18日(日)6:00 朝勤行(蓮華定院)~奥の院参拝
 夜明け前に本堂で「朝勤行」が始まる。夜更かしして中村氏を囲んで談義をしていた塾生もスタッフも連座し、添田住職ほか4人の僧侶が唱える「理趣教」にひたすら集中する。「理趣教」とは真言宗の常用経典で、人間の自性浄化を説くものとされる。その効あってか、住職の声がけで焼香が始まると、所狭しとランダムに座っていた塾生たちは、互いの気配を察知しながら整然とふるまっていた。
 朝の精進料理をいただいたあとは、約2キロの石畳の参道を歩いて、空海入定の地・「奥の院」へ。
 杉木立の参道の両脇には、雪を頂いた約30万基もの墓石や供養塔が林立している。織田信長や豊臣秀吉といった歴史ヒーローの供養塔にまじって、ロケットや福助やコーラのビンを象ったユニークな形の企業墓もあり、塾生たちも興味津々。ようやく空海の御廟にたどりつき、神妙な顔つきで揃って手を合わせる。

2009021313.JPG

■1月18日(日)10:30 中村明一氏 尺八演奏(蓮華定院)
 塾生たちが奥の院詣出をしているあいだ、蓮華上院では一人中村さんだけが精神統一のため控室に籠もっていた。奥の院から戻った塾生たちが大広間に集い、息をつめて見守る中、静かに障子が開き、紋付羽織袴姿の中村さんが登場。静かに尺八を構えたかと思うと、寂びた音色がたちまち空間をふるわせる。曲目は、「獅子」。次第にテンポが激しくなりながら、獅子が頭を振って舞い狂う情景が表現される。続く「鶴の巣籠(すごもり)」では、親子鶴の情愛と子別れという一篇の物語が超絶的な奏法によって綴られた。さらに、尺八よりも一回り大きい法竹に持ち替え、虚無僧伝承曲の「心月」「薩慈」。密息と循環呼吸の技術が駆使され、音なのか息なのかその境界を往来するかのような演奏に、セイゴオも塾生もすっかり酔いしれた。いつまでも鳴り止まない拍手を受けながら、中村さんは予定外にもう一曲「打破」をプレゼントしてくれた。

2009021312.JPG

■1月18日(日)1:30 セイゴオ ソロトーク(大師教会)
 昼食後、真言宗本部がある大師教会へ移動。智拳印を結んだ大日如来の巨大な掛軸を背景に、セイゴオが締めのトーク行った。高野山開創1200年を7年後にひかえた今、密教関係者のみならず日本人がしておくべきことを、いくつかのポイントに絞り込んで話した。

松岡:密教にかぎらず、宗教は完全に「方法」だと思ったほうがいい。会社、生活、思想、思考、技術のためのヒントにするものだと思うべきだ。金融恐慌で不安定な時代だからこそ、密教が重要視する「教相(きょうそう)」と「事相(じそう)」を方法として取り出してみるとよい。教相とは真言密教の理論で、事相とは真言密教を実践する方法のこと。この「教」と「事」の“あいだ”にこそ、今日の企業社会が注目すべき方法がひそんでいる。

2009021309.jpg

 じつはセイゴオは高野山入りするまで咳や微熱でいまひとつ体調が万全ではなかった。スタッフたちは「万が一」に備え、大量の市販薬を持ち込み、冬山登山なみの防寒具を手配し、付近の病院も調査していたほどだった。
 不思議なことに一泊二日のプログラムを終えると、セイゴオはすっかり回復していた。ほかでもない空海が今も生きていると信仰される地で、瞑想や密息や中村さんの尺八、さらには塾生たちのすぐれた感度によって心身がすっかり浄化されたようだった。

投稿者 staff : 21:49