第二百六十六夜【0266】2001年4月9日
Seigow's Book OS /
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マハトマ・ガンジー
『ガンジー自伝』
1928
春秋社・1968・1983 中央公論社
Mahatma Gandhi : The Story of
My Experiments with Truth. 1927〜1929
蝋山芳郎 訳 |
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| サッティヤーグラハ運動中のガンジー(1914年) |
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いかにもガンジーらしい自伝である。こういう自伝はめったにない。ガンジー以外にこういう自伝は書けないといえば、何を当たり前のことを言っているのかとおもうだろうが、どうしてもそのように言いたくなるものがある。
理由ははっきりしている。この自伝にはガンジーがもっと遠慮なく自慢してもいいだろうことや、われわれが誇りたくなるようなガンジーのことがいっさい触れられていないのである。たとえば、世界中を驚かせ、感動させ、インドの民衆にとっても忘れられない誇りとなった1930年3月の「塩の行進」については、1行も触れられていない。
のみならず、反英独立運動の再三にわたる歴史的な高揚についても、まったく触れられてはいない。わかりやすくいえば、アカデミー賞をとったリチャード・アッテンボローの映画『ガンジー』で描かれたあのガンジーの、まさにガンジーらしい想像を絶する勇気と異様な忍耐と民衆の共感によるすばらしい高揚は、この自伝では綴られてないわけなのだ。ようするに、ガンジーが自分で政治的な活動だとみなしているすべての活動とその活動に関する感想が、省かれてしまっているのである。
この自伝が伝記のガンジーや映画のガンジーを彷彿させないようになった第1の大きな理由のひとつは、この自伝が1920年の全インド国民会議派のナグブル年次総会の記述で打ち切られていることにある。これでは当然のことながら、その後の反英運動や「塩の行進」や独立のための苦闘は入らない。
しかし、これはガンジー自身がここで確固たる自覚のもとにあえて打ち切ったためでもあった。書こうとおもえばいくらも書けた。ところがそうしなかった。ガンジー自身がこのあと突入していく政治の季節の叙述を拒否したともいえるわけなのだ。そして、そのように自伝の主旨をも頑固に貫いたところに、やはりただならないガンジーがいる。
しかし、もうひとつ、第2の理由もある。それは、ガンジーが自伝という様式に疑問をもっていたということだ。
だいたいアジアには自伝を書く習慣がない。自伝というのはヨーロッパ人の奇妙な習慣であり、ヨーロッパにおける個人の強調なのである。自伝を書くアジア人はたいていはヨーロッパの学校教育を受けているか、ヨーロッパでの生活が長かった者ばかりであることが多い。周囲から自伝の執筆を頼まれたとき、ガンジーはこのことについて悩む。
けれども周囲の希望は熱心だった。誰もがガンジーの生い立ちやイギリスでの日々やインド回帰のことを知りたがっていた。寡黙なガンジーはそういうことを周囲にめったに洩らさない。そうでなくとも、毎週月曜日を「沈黙の日」にして、筆談でしかコミュニケーションをしなかった人なのだ。
ともかくもガンジーはアジアの伝統を曲げて自伝を書くことにする。そのかわり、この自伝を「真実のための実験」の記録だけにしぼることを決意するのである。それも最初は刑務所に投獄されたときに限ろうとした。これがガンジーの自伝が珍しいものになっている第2の理由にあたっている。
ガンジーの「真実のための実験」とは、ガンジーが「ここ30年間なしとげようと努力し、切望してきたこと」と書いていることだが、それは「自己の完成、神にまみえること、人間解脱に達すること」である。
このことをガンジーは本書の副題にも掲げた。「真実をわたしの実験の対象として」というものである。ガンジーのこの言葉は、ガンジーにはどうしても掲げるべきモットーであり、告白であり、確信だったようだ。
のちにタゴールが記者に語ったことがある。「ガンジーは私よりはるかに偉大な人間だ」と。記者は「どうしてそんなふうに思われるのか」と聞いた。タゴールが答えた、「ガンジーは自分自身に完全に誠実に生きた。それゆえに神に対しても誠実であり、すべての人々に対しても誠実だった」と。タゴールはさらに加えて、「ガンジーは勇気と犠牲の化身である」と結んだ。この言葉はガンジーと親しかったタゴールの言葉として、ガンジーの本質をぴったり言い当てている。「真実をわたしの実験の対象として」という副題はガンジーにしかつけられない副題なのである。
参考¶ガンジー自伝ではガンジーの生涯はわからない。そこでいろいろの伝記や評伝を補うことになるが、最もガンジーを彷彿とさせるのはクリシュナ・クリパラーニの『ガンディーの生涯』上下(レグルス文庫)であろうか。クリパラーニの著作は同じ文庫に『タゴールの生涯』も入っている。
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| 『海上の道』柳田国男 |
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1143
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『異装のセクシャリティ』石井達朗 |
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1142
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『日本人の自画像』加藤典洋 |
1141
| 『稲と鳥と太陽の道』萩原秀三郎 |
1140
| 『猿と女とサイボーグ』ダナ・ハラウェイ |
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| 『カムイ伝』白土三平 |
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| 『江戸の枕絵師』林美一 |
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| 『ゲイ文化の主役たち』ポール・ラッセル |
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| 『悪徳の栄え』マルキ・ド・サド |
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| 『非常民の性民俗』赤松啓介 |
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| 『日本創業者列伝』加来耕三 |
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1133
| 『市場の書』ゲルト・ハルダッハ&ユルゲン・シリング |
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『女帝の手記』里中満智子 |
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1131
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『日本/権力構造の謎』上・下 カレル・ヴァン・ウォルフレン |
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『多文明共存時代の農業』高谷好一 |
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『木村蒹葭堂のサロン』中村真一郎 |
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『江戸商売図絵』三谷一馬 |
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| 『性的差異のエチカ』リュス・イリガライ |
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| 『インターネット資本論』スタン・デイビス&クリストファー・マイヤー |
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| 『ボランティア』金子郁容 |
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| 『アヴァン・ポップ』ラリイ・マキャフリイ |
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| 『笑いの経済学』木村政雄 |
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| 『ぼくの哲学』アンディ・ウォーホル |
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『資本主義のハビトゥス』ピエール・ブルデュー |
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『猫と小石とディアギレフ』福原義春 |
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『江戸の市場経済』岡崎哲二 |
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『田中清玄自伝』田中清玄・大須賀瑞夫 |
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『黒い花びら』村松友視 |
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『昭和という時代』鈴木治雄対談集 |
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『澄み透った闇』十文字美信 |
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『市場対国家』ダニエル・ヤーギン&ジョゼフ・スタニスロー |
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『負ける建築』隈研吾 |
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『未来派』キャロライン・ティズダル&アンジェロ・ボッツォーラ |
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『写真ノ話』荒木経惟 |
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『建築的思考のゆくえ』内藤廣 |
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『バイ・バイ・キップリング』ナム・ジュン・パイク |
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『コンセプチュアル・アート』トニー・ゴドフリー |
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『モダンデザイン批判』柏木博 |
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