百一夜【01012000年7月28日

Seigow's Book OS / CORE
ライアル・ワトスン
『スーパーネイチュア』
1974 蒼樹書房
Lyall Watson : Supernature 1973
牧野賢治 訳

[表紙]『スーパーネイチュア』
© 蒼樹書房

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"Lifetide" 1979

"Lifetide" 1979



『共鳴する神々』ライアル・ワトソン 松岡正剛ほか 1994

『共鳴する神々』ライアル・ワトソン 松岡正剛ほか 1994

 

 
 「われわれの経験のなかで最も美しいものは神秘的なものである」と言ったのはアルバート・アインシュタインだった。
 ライアル・ワトソンはその言葉を信じるかのようにして、この本を書き、そしてこの手の本としては希有な世界的なベストセラーとなった。かなり勇気のいる仕事だったろう。なぜならワトソンはデズモンド・モリスの弟子でもあった正真正銘の動物学者であり、生物学の博士でもあったからである。それが科学と神秘の間に挑戦したわけなのだ。
 ぼくがこの本に出会ったのは、1974年のことである。それから5年後にワトソン本人に会う。そしてもうひとつの彼のベストセラーとなった『生命潮流』を工作舎で翻訳する相談をした。
 それからはワトソンとはいろいろなコラボレーションをした。いつも静かだが、頑固でひたむきな情熱家でもあって、ひとつのことに熱中すると、それを手放さない子供じみたものをもっている男だった。大相撲が好きで、日本に来ると、たいていは序の口から国技館にも大阪府立体育館にも出掛けていく。実は大本教の大ファンでもある。実際にも亀岡でデビッド・キッドらと1シーズンを暮らしている。

 本書のタイトルになっている「スーパーネイチュア」という言葉は、ワトソンの造語であって、こんな言葉は英語にはなかった。どちらかといえば思想的には危険な言葉である。
 しかし、本書がもたらしたものは、その後の科学にも大きな影響を与えることになった。なぜなのか。アインシュタインが言うように、科学で説明のつかなさそうなところから、人間は自然現象に関心をもち、おまけにその現象の近くに居合わせた者はとくに、その神秘の理由を知りたがるからである。
 ワトソンはこの“知りたがり”の読者を満足させようとしたわけではない。そうではなくて、そのようなスーパーネイチュアな現象の背後には、何かメタシステムが動いていたり、あるいは相互につながりあっているネットワークがあるのではないかということを示唆したかったのである。
 本書に書いてあることを、ぼくは今回読みなおさなかった。理由ははっきりしている。ここに書いてあることの大半が、その後いろいろな科学領域の深化や前進によって少しずつあきらかになり、その叙述がかなり過去のものになってしまっているからだ。そのことはワトソン自身もよく知っていて、本書の内容の一部はその後、彼の著書のいろいろな場面で補充され、訂正された。

 この本を読んだことは、その後のぼくの工作舎における仕事に影響を与えた。ワトソンの本を訳して刊行したこともさることながら、工作舎のその他の活動にスーパーネイチュア的な伴奏をつけることになった。
 いまおもうと、その伴奏はいささか強すぎたような気がする。それは、かつて若いころに長髪にしていた青年やミニスカートをはいていた青女が、その後10年、20年をへてそのころの自分の写真を見て、なぜそこまでやったのか、いささか羞かしくなることに似ている。
 きっとワトソンも本書を“長い髪の時代”の産物だと見ていることだろう。しかしながら思想の青春とは、表明の早熟とは、つねにそういうものなのだ。








 






 

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千 夜 千 冊 BACK NUMBER

[目次]

1144

『海上の道』柳田国男

1143

『異装のセクシャリティ』石井達朗

1142

『日本人の自画像』加藤典洋

1141

『稲と鳥と太陽の道』萩原秀三郎

1140

『猿と女とサイボーグ』ダナ・ハラウェイ

1139

『カムイ伝』白土三平

1138

『江戸の枕絵師』林美一

1137

『ゲイ文化の主役たち』ポール・ラッセル

1136

『悪徳の栄え』マルキ・ド・サド

1135

『非常民の性民俗』赤松啓介

1134

『日本創業者列伝』加来耕三

1133

『市場の書』ゲルト・ハルダッハ&ユルゲン・シリング

1132

『女帝の手記』里中満智子

1131

『日本/権力構造の謎』上・下 カレル・ヴァン・ウォルフレン

1130

『多文明共存時代の農業』高谷好一

1129

『木村蒹葭堂のサロン』中村真一郎

1128

『江戸商売図絵』三谷一馬

1127

『性的差異のエチカ』リュス・イリガライ

1126

『インターネット資本論』スタン・デイビス&クリストファー・マイヤー

1125

『ボランティア』金子郁容

1124

『アヴァン・ポップ』ラリイ・マキャフリイ

1123

『笑いの経済学』木村政雄

1122

『ぼくの哲学』アンディ・ウォーホル

1121

『百物語』杉浦日向子

1120

『女性の深層』エーリッヒ・ノイマン

1119

『北条政子』永井路子

1118

『ネット・ポリティックス』土屋大洋

1117

『T.A.Z.』ハキム・ベイ

1116

『江戸の身体を開く』タイモン・スクリーチ

1115

『資本主義のハビトゥス』ピエール・ブルデュー

1114

『猫と小石とディアギレフ』福原義春

1113

『江戸の市場経済』岡崎哲二

1112

『田中清玄自伝』田中清玄・大須賀瑞夫

1111

『黒い花びら』村松友視

1110

『昭和という時代』鈴木治雄対談集

1109

『澄み透った闇』十文字美信

1108

『市場対国家』ダニエル・ヤーギン&ジョゼフ・スタニスロー

1107

『負ける建築』隈研吾

1106

『未来派』キャロライン・ティズダル&アンジェロ・ボッツォーラ

1105

『写真ノ話』荒木経惟

1104

『建築的思考のゆくえ』内藤廣

1103

『バイ・バイ・キップリング』ナム・ジュン・パイク

1102

『コンセプチュアル・アート』トニー・ゴドフリー

1101

『モダンデザイン批判』柏木博


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