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 【12月4日】

 

 光源氏といえどもなしとげられなかった恋が二つある。一つは明石の上との恋であり、もう一つは空蝉との恋である。
 このような解釈の切り口を『源氏物語』に与えたのは、おそらく『嵯峨本』を編集した本阿弥光悦であったろう。これを俵屋宗建が、『源氏物語 関屋・澪標図』の一双の屏風にしたててから、はやりの絵模様になった。
 石山寺に詣でようと、逢坂の関にさしかかった源氏は、夫の任国常陸から上京する空蝉とすれちがう。
 昔の思いが今も生き生きとしているという源氏のことづてをうけて、空蝉は、「昔だってこんなことがあると恥ずかしかったのに、すべてが初めてのような心地がしてどうしてよいかわからないけれど、源氏の消息はめずらしく、返事をせずにはいられない」とそわそわして、
「逢坂の関はいかなる関、繁る木が立ち並ぶ間をなげきの中を分けいるでしょう
 夢のようになん。」
と伝えた。
 「いかなる関」というのは、崇神天皇九年春三月、天皇の夢枕に神人が現れ、「墨坂の神と逢坂の神を祀れ」と伝え、二つの坂神を祀ると悪疫は平癒したという、「道切り」の伝承にもとづくであろう。
 逢坂の関に鎮座したまう坂神は、二人を逢わせはするけれども、また別れさせる。




 

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